日本食レストランで起業

ドイツで日本食レストランを開業する(2)

chef 2 mドイツの労働時間法と飲食業界

ドイツの労働時間は基本的に,1日8時間(週48時間)を標準として,企業の事情によって最大10時間(日),60時間(週)まで許可されています。従業員の労働時間が10時間または超える場合,経営者は時間外労働を行った従業員の労働時間を書面で記録して,最低2年間保管することが義務付けられていました。そして,そのような「特別な」長時間労働日は,最大でも年間に15回程度とされています。
このようなドイツ労働時間法ですが,レストランの飲食業界にも例外なく適用されます。しかし,しかし,現実はというと,レストラン・ホテル業界の従業員,特にキッチンスタッフの労働時間は週70時間が当たり前,仕事が終わって8時間後にはまた厨房内,というのが現状。国を問わず,厨房の仕事時間が長いというのはどこでも似たようなものかも知れません。
しかし,ドイツ労働時間法に反することに変わりはありませんので,雇う側も雇われる側も留意してください。

最低賃金の導入と飲食業界

2015年からドイツでも(ようやく)最低賃金が導入されました。2019年1月からの税込み時給は 9.19 ユーロ(2020年1月からは 9.35 €)ですので,職種を問わず最低賃金以下で人を雇うことはできません。また,前述のように,従業員の労働時間の記録はこれまで例外的な労働に限られていましたが,最低賃金制度の導入に併せ,レストラン業界においてはパートタイムを含む全従業員の労働時間記録を2年間保管しなければならなくなりました。最低賃金の導入以前から,特に労働時間法に対する飲食・宿泊業界(経営者側)の不満は大きく,レストランやホテルの従業員の長時間労働はやや当たり前になっていたのが実情。またレストラン経営者や団体から反旗が翻されるかも知れません。

ドイツの人件費

ドイツの日本食レストランでは,他の一般のドイツ飲食店と同じく,シェフを除くと,最低賃金ぐらいで働いていた人たちが多いと思います。しかし,ドイツで日本食レストランを開こうという人たちは経営者側ですから,最低賃金であっても,経費の最も高い割合を占める人件費がビジネスプランに大きく関わってきます。

週48時間の労働でも1人の月給は1768ユーロ。税込みであっても,健康保険の折半分などで雇用主の支出は約20%増となり,最終的に2121ユーロ(28万円強)が従業員1名に必要な経費の目安です。ドイツの労働法に沿った従業員の有給休暇(24日以上/年)や病欠時の対応,不慮の事故などまで考慮すると,3千ユーロでも低い見積もりかも知れません。

それで,ドイツのレストランでは非正社員,パートタイム,ミニジョブなどとして働いている人たちが多いわけです。ミニジョブ(Minijob)は,月給450ユーロを上限として,経営者が非雇用者に支払う社会保障費が免除される労働制度です。日本食レストランでは,ワーキングホリデイでドイツに来ている若者たちを雇う例が多いようです。
いずれの場合においても,雇用契約書は必要ですので,使用者も非雇用者もぜひ認識してほしいと思います。

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